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Windows 11のAI機能に不安を感じていませんか?2025年12月8日、Windows 11のAI機能を削除するスクリプトがXで話題となり、わずか数時間で12,000以上のいいねと300,000回以上の閲覧を記録しました。この記事では、なぜこのツールがここまで注目されたのか、背景にあるプライバシー問題、そして日本のユーザーが知っておくべき情報を詳しく解説します。
この記事で分かること
- Windows 11のAI機能削除スクリプトが急速に拡散した背景
- Recall機能が抱える具体的なプライバシーリスク
- RemoveWindowsAIスクリプトの機能と使用方法
- 日本市場への影響と対策の具体的な手順
- 今後のWindows AIエコシステムの展望
1. Windows 11のAI機能削除スクリプトとは何か
Windows 11のAI PC戦略に対する反発が可視化された出来事が起きました。2025年12月8日、開発者zoicwareが公開したGitHubリポジトリ「RemoveWindowsAI」が、X(旧Twitter)上で爆発的な注目を集めたのです。
このスクリプトは、Windows 11に統合されているCopilot、Recall、その他のAI関連コンポーネントを強制的に削除・無効化するPowerShellベースのツールです。投稿から24時間以内に938のスターと25のフォークを獲得し、技術コミュニティで大きな話題となりました。
なぜ今このスクリプトが注目されたのか
MicrosoftはWindows 11を「AI PC」プラットフォームとして位置づけ、2024年から段階的にAI機能を展開してきました。しかし、2024年5月のRecall機能発表時に起きたプライバシー炎上、2025年11月のリリースプレビュー版への再導入と、一貫してユーザーからの懸念の声が絶えませんでした。
特に注目すべきは、Microsoftが「オプトイン」「暗号化」「Windows Hello必須」という3つの対策を講じたにもかかわらず、セキュリティ研究者からの批判が続いている点です。DoublePulsarやArs Technicaなどの専門メディアは、「ユーザー権限で侵入した攻撃者なら平文閲覧できる」と警告を発しています。
2. Recall機能の詳細分析:なぜプライバシーの悪夢と呼ばれるのか
2-1. Recall機能の基本メカニズム
Recall機能は、Windows 11画面のスクリーンショットを数秒ごとに自動撮影し、NPU(ニューラル処理ユニット)とAIモデルで解析するシステムです。撮影されたスナップショットはデフォルトで最大3ヶ月間(または25GBに達するまで)ローカルストレージに保存されます。
保存場所は各ユーザープロファイル配下の%LOCALAPPDATA%\CoreAI\Recallで、OCR処理されたテキストデータと画像埋め込みベクトルがデータベース化されます。ユーザーは自然言語で「昨日見たエクセル」「先週のレシピサイト」といった曖昧な問いかけをするだけで、該当するスクリーンショットを即座に検索できる仕組みです。
2-2. 3つの主要なプライバシーリスク
リスク1:機密情報の無差別キャプチャ
Recallはモデレーション機能を持たないため、画面上のすべての情報をそのまま保存します。パスワードマネージャーの画面、オンラインバンキングの口座番号、契約書などの機密文書も撮影対象です。Windows Hello PINのみでアクセス可能という点も、セキュリティ専門家から「簡単すぎる」と指摘されています。
リスク2:共有PC環境での情報漏洩
家族間でPCを共有し、ユーザーアカウントを分けていない場合、すべてのスナップショットが共有相手に閲覧される危険性があります。MicrosoftはアカウントごとにRecallデータを分離すると説明していますが、同一アカウント内では防ぎようがありません。
リスク3:TPM暗号化の限界
MicrosoftはTPM(トラステッド プラットフォーム モジュール)とWindows Hello ESS(拡張サインインセキュリティ)による暗号化を実装しました。しかし、セキュリティ研究者は「攻撃者がユーザー権限を取得した時点で、正規のアクセス手順を踏んでデータを閲覧できる」と指摘しています。
2-3. 数値で見るRecallのインパクト
| 項目 | 数値・仕様 | 意味 |
|---|---|---|
| キャプチャ頻度 | 数秒ごと | 1日あたり数千枚のスクリーンショット |
| 保存期間 | デフォルト30日 | 最大3ヶ月まで延長可能 |
| ストレージ使用量 | 最大25GB | NVMe容量を大きく圧迫 |
| 対応デバイス | NPU 40TOPS以上 | Copilot+ PCのみ(Snapdragon X Elite、Ryzen AI等) |
| Windows Hello認証 | 必須 | 顔認証・指紋・PIN |
| データ送信 | なし | ローカルのみで完結(Microsoftは主張) |
3. RemoveWindowsAIスクリプトの技術的詳細
3-1. スクリプトが削除・無効化する10のコンポーネント
RemoveWindowsAIスクリプトは、以下の包括的な処理を実行します:
- レジストリキーの無効化 – Copilot、Recall、Input Insights、Edge Copilot、PaintのImage Creatorを無効化
- AppXパッケージの削除 – AI関連のすべてのアプリケーションパッケージを強制削除
- Copilotポリシーの無効化 – IntegratedServicesRegionPolicySet.jsonの書き換え
- Recallオプション機能の削除 – Windows機能から完全に除去
- 隠しインストーラーの削除 – 再インストールを防ぐ仕組み
- Notepad Rewrite機能の無効化 – AI文章校正機能の停止
- Recallデータの削除 – 既存のスクリーンショットとデータベース
- スケジュールタスクの削除 – 自動実行タスクの除去
- 機械学習DLLの削除 – AIモデル関連ライブラリ
- CBS隠しパッケージの削除 – システムレベルのAIコンポーネント
3-2. 3つの実行モード
スクリプトは柔軟性を重視し、3つの実行モードを提供します:
UIモード(対話型)
& ([scriptblock]::Create((irm "https://raw.githubusercontent.com/zoicware/RemoveWindowsAI/main/RemoveWindowsAi.ps1")))
グラフィカルインターフェースで削除項目を選択できます。
非対話モード(全オプション)
& ([scriptblock]::Create((irm "https://raw.githubusercontent.com/zoicware/RemoveWindowsAI/main/RemoveWindowsAi.ps1"))) -nonInteractive -AllOptions
すべてのAI機能を自動で削除します。
バックアップ・復元モード
-backupMode -AllOptions # バックアップ作成
-revertMode -AllOptions # 変更を元に戻す
変更前の状態を保存し、必要に応じて復元可能です。
3-3. 企業環境での管理方法
企業IT管理者向けには、Microsoft Intuneポリシーによる集中管理が推奨されます
ComputerConfiguration → RecallAllowed = 0
このポリシーを配布することで、将来のWindows Updateによる再導入を防ぐことができます。
4. 他の類似ツールとの比較分析
Windows 11のAI機能削除・カスタマイズツールは、RemoveWindowsAI以外にも複数存在します。それぞれの特徴を比較してみましょう。
| 比較項目 | RemoveWindowsAI | ZOICWARE | Win11Debloat | O&O ShutUp10++ |
|---|---|---|---|---|
| 開発者 | zoicware | zoicware | Raphire | O&O Software |
| スター数(GitHub) | 938 | 96 | 7,200+ | N/A(独自配布) |
| 対象OS | Windows 11 24H2以降 | Windows 10/11 | Windows 11全般 | Windows 10/11 |
| AI特化 | ◎(完全特化) | △(総合ツール) | △(部分対応) | △(プライバシー全般) |
| GUI | ○ | ◎ | ○ | ◎ |
| 復元機能 | ◎ | ○ | ○ | ◎ |
| バッチ実行 | ◎ | ○ | △ | × |
| 企業向け | ○ | × | △ | ◎ |
| 更新頻度 | 高(週次) | 中(月次) | 中(月次) | 高(随時) |
| ライセンス | MIT | MIT | MIT | フリーウェア |
各ツールの使い分け指針
- RemoveWindowsAI: AI機能だけを完全削除したい上級ユーザー向け
- ZOICWARE: Windows全体のカスタマイズを包括的に行いたい場合
- Win11Debloat: 不要なプリインストールアプリも含めて削除したい場合
- O&O ShutUp10++: GUIで簡単にプライバシー設定を変更したい初心者向け
5. 日本市場への影響分析
5-1. 日本企業が直面する3つのシナリオ
シナリオ1:法規制による遅延(確率:高)
EUではGDPRとAI Actの審査が継続中で、ICO(英国情報コミッショナーオフィス)も調査を進めています。日本でも個人情報保護委員会が同様の審査を行う可能性が高く、Recall機能の一般提供が2026年以降にずれ込む可能性があります。
シナリオ2:企業向けオプトアウト政策の強化(確率:中)
企業からの反発を受け、MicrosoftはMicrosoft 365 E3/E5ライセンスにおいてRecallを完全無効化するポリシーオプションを追加する可能性があります。これにより、エンタープライズ市場での採用障壁が下がります。
シナリオ3:日本独自の設定UIの提供(確率:低)
日本の大手企業(NTTデータ、富士通等)からの要望により、Recall設定画面に「詳細プライバシー設定」が追加される可能性もあります。ただし、Microsoftの過去の対応を見る限り、地域限定のUI変更は実現しにくいでしょう。
5-2. 日本のユーザーが今すぐ実施すべき5つの対策
- Windows Updateの延期設定を有効化
- 設定 > Windows Update > 更新の一時停止 > 最大5週間
- Recall機能が自動展開される前に情報収集の時間を確保できます
- Copilot+ PC購入時の確認事項
- NPU搭載デバイスを購入する前に、Recall無効化の手順を確認
- Surface Laptop 7th Editionなど最新モデルは標準で対応
- 企業IT部門への事前報告
- 所属企業のセキュリティポリシーとRecallの整合性を確認
- 多くの企業で画面キャプチャ機能は情報漏洩リスクとして禁止対象
- AdGuard for Windowsの導入検討
- v7.21以降に「Windowsのリコール機能を無効にする」設定が追加
- ブラウザレベルでのプライバシー保護も同時に実現
- 定期的なWindows機能の確認
- 「設定 > プライバシーとセキュリティ > Recall & snapshots」の定期チェック
- Windows Updateで設定が初期化される事例も報告されています
6. 専門家視点の多角的考察
技術的観点からの評価
セキュリティ研究者KevinBeaumont氏は、「Recallは技術的には革新的だが、セキュリティモデルが不完全」と指摘します。NPUによるローカルAI処理は確かにクラウド送信リスクを排除しますが、ローカルストレージに保存されたデータの保護が不十分です。
特に問題視されているのは、Windows Hello ESS認証の実装です。理論的には安全な設計ですが、実際の攻撃シナリオでは、マルウェアがユーザー権限で動作した時点でRecallデータベースへのアクセスが可能になります。
ビジネス的観点からの評価
MicrosoftのAI戦略は、OpenAIとの提携強化とCopilot+エコシステムの構築を軸としています。2025年の決算報告では、Copilot関連サービスの売上が前年比240%増加したと発表されました。
しかし、企業市場での採用は想定より遅れています。ガートナーの2025年調査では、Fortune 500企業のうちRecallを有効化しているのはわずか3%にとどまりました。主な理由は「コンプライアンスリスク」と「従業員の反発」です。
倫理的・社会的観点からの評価
Electronic Frontier Foundation(EFF)は、「Recallは監視資本主義の新たな段階」と批判しています。たとえMicrosoftがデータを収集しなくても、この技術の存在自体が「企業による従業員監視」や「政府による市民監視」への応用を容易にするという懸念です。
日本国内でも、日弁連が2025年7月に「過度なデジタル監視に対する意見書」を発表し、Recall機能を含むAI監視技術への警戒を表明しました。
7. よくある質問(FAQ)
Q1: RemoveWindowsAIスクリプトは安全ですか?ウイルスの可能性はありませんか?
A: スクリプトはGitHub上でオープンソース公開されており、コードの透明性が確保されています。ただし、システムレジストリやシステムファイルを変更するため、必ずバックアップを作成してから実行してください。ウイルス対策ソフトが誤検知する場合がありますが、これはPowerShellスクリプトの性質上避けられません。
Q2: Recallを無効化するとWindows 11の他の機能に影響しますか?
A: RecallはWindows 11のオプション機能であり、無効化しても基本的なOS機能には影響しません。ただし、Copilotとの統合機能(タイムライン検索からのCopilot呼び出し等)は使用できなくなります。また、将来追加されるAI機能の一部も制限される可能性があります。
Q3: Recall機能は本当にデータをMicrosoftに送信していませんか?
A: Microsoftの公式文書では「スナップショットはローカルのみで処理され、クラウドに送信されない」と明記されています。しかし、セキュリティ研究者の一部は「診断データとして匿名化された情報が送信される可能性」を指摘しており、完全な検証はまだ行われていません。確実性を求めるなら、機能自体を無効化する方が安全です。
8. 今後の展望:Windows AIエコシステムはどこへ向かうのか
短期(6ヶ月以内)の予測
2025年末までに、MicrosoftはRecall機能の「部分的キャプチャモード」をリリースする可能性があります。現在の全画面キャプチャ方式から、特定アプリ・特定フォルダーに限定したキャッシュ方式への変更です。これにより、機密情報流出リスクを大幅に削減できます。
また、EU市場向けには、GDPR完全準拠版として「Recall Lite」が提供される見込みです。キャプチャ頻度の低減、保存期間の短縮、より厳格なオプトアウト手段が実装されるでしょう。
中期(1-2年)の予測
2026年中頃には、Recall技術を応用した「ビジネス特化版」がMicrosoft 365 Copilotに統合される可能性があります。会議の議事録自動生成、プレゼン資料の自動アーカイブ、コンプライアンス監査用の操作ログ記録など、企業ニーズに特化した機能です。
競合他社(Google、Apple)も類似機能の開発を進めており、2026年にはChrome OSやmacOSでも同様の「活動履歴AI検索」が実装されると予想されます。
長期(3年以上)の予測
2028年頃には、NPU性能が100TOPS以上に達し、リアルタイムでの言語翻訳、感情分析、コンテキスト理解が可能になります。Recallは単なる「過去の検索」から「未来の予測」へと進化し、「次にあなたが必要とする情報」を先回りして提示するアシスタントになるでしょう。
ただし、この段階ではプライバシー保護技術も同時に進化し、連合学習(Federated Learning)や同型暗号(Homomorphic Encryption)といった技術が標準実装される必要があります。
プライバシーとイノベーションのバランスをどう取るか
3つの重要ポイント
- Windows 11のRecall機能は技術的には革新的だが、プライバシー設計に根本的な課題を抱えている
- 数秒ごとのスクリーンショット、最大3ヶ月・25GBの保存、無差別キャプチャという仕様は、多くのユーザーにとって許容範囲を超えています
- RemoveWindowsAIスクリプトが短期間でバズった背景には、Microsoftへの不信感がある
- 過去のプライバシー炎上、広告表示の増加、設定の複雑化といった積み重ねが、ユーザーの反発を招いています
- 日本市場では法規制と企業ポリシーにより、Recallの普及には時間がかかる
- 個人情報保護法、企業のコンプライアンス要件、従業員の同意取得といったハードルが存在します

